サンデー毎日:2007/04/29
Posted in 未分類 on 4月 10th, 2008 No Comments »
シリーズ【医療 新世紀】 「最新歯科治療 『All-on-4』」 大分岡病院は、岡宗由氏が1954年に開院して以来、一貫して「地域に根ざして共にいきる」を病院の基本理念に掲げ、地域医療を推進している大分市の中核病院だ。2代目の岡敬二理事長が、従来の方針に加えて“特色ある医療サービスの提供”として2005年に打ち出したのが、日本初の“歯科医師・医師・コメディカル”が協同して顎顔面を専門的に治療する医療システム。最先端の歯科医療現場で、最新の即日インプラント治療「All-on-4(オールオン4)」が行われている。 “院内ですべてが完結する” 即日インプラントを病診連携で推進「マキシロフェイシャル ユニット(顎顔面治療部)」 -歯のインプラント治療、および「オールオン4」とはどのような治療ですか。 平野 歯科インプラントとは、あごの骨にチタン製のインプラント(人工歯根)を埋め込む方法で、現在は歯を失った際、最初に考慮する治療との評価が世界中で定着しています。最新の治療概念である「オールオン4」は、まったく歯がない患者さんに4本のインプラントを埋め込み、手術をしたその日から固定式の歯(ブリッジ)を使用して食べたいものが食べられる画期的な治療です。 松本 通常の総入れ歯(義歯)は、かむ力をすべて歯ぐきで支えているので、固いものをかむと痛かったり、大きくて違和感があったり、外れやすかったりして、本来の自分の歯のようにはかめません。しかし、オールオン4は、かむ力すべてを4本のインプラントが支え、固定しているので、入れ歯のように“すべり”や“ずれ”がなく、何でも自分の歯のように力強くかむことができます。 -お2人が所属される「マキシロフェイシャルユニット」は、どういうところですか。 松本 顎顔面治療部の「マキシロフェイシャルユニット」(以下、マキシロ)は、従来の診療科の枠を外し、さらにコ・メディカルが加わった1つのチームとして、「顎」「顔」「口」に関する専門治療を行います。治療内容は、オールオン4(インプラント治療)のほか、“顎・顔・口の外傷”や“顎変形症の外科矯正”“顔面腫瘍、後遺症”“口唇・口蓋裂”などで、入院して全身麻酔の手術が可能です。 顎顔面治療に対する横断的なチーム医療体制は欧米では一般的ですが、日本では初めての試みです。現在、専門医4人(口腔外科を専門とする歯科医師2人、形成外科古川医師、皮膚科・形成外科澁谷医師)、およびコ・メディカル8人(歯科技工士1人、歯科衛生士4人、看護師2人、医療受付1人)の総勢12人の医療専門家から構成されています。 3つの診察室と外来手術室(2室)は、プライバシーと感染予防を考慮してすべて完全個室で、スタンダードプリコーション(標準予防策)に準拠した感染予防を実施しています。 -オールオン4を希望する患者さんはどのような方で、どのような経緯で来院されますか。 平野 2005年12月~2007年1月までの14ヵ月間に、13症例(上顎13顎、下顎6顎の計19顎)を手術しましたが、100%の成功率です。手術時の年齢は40~78歳(平均61歳)で、その過半数にがん、高血圧症、糖尿病、骨粗鬆症などさまざまな既往がありました。初診時の状態は、歯が1本もなくて総入れ歯を使用していた方は19顎中6顎で、多くは重度の歯周病や虫歯によって近い将来に抜歯が必要な方でした。 マキシロの治療は、主に地域の歯科診療所との病診連携を通じて行っており、紹介率は80~90%にも達しています。オールオン4も例外ではなく、そのうち6症例は地域の診療所からの紹介です。現在、連携登録歯科診療所は31施設で、その多くは当院の所在地である大分市と近隣の市ですが、遠くは宮崎県や沖縄県まで含まれています。 これからの歯科医師にとってインプラント治療は避けて通れない重要テーマですが、現在インプラント治療を行っていない診療所も役割分担をすることで、治療を行うことができるようになると思っています。例えば、インプラントを埋め込む手術と同日に連結する人工歯(上部構造)製作まではマキシロが担当し、術後のアフターケアや歯周治療、かみ合わせの調整、最終的な人工歯の製作を診療所が行えば、オールオン4は確実に地域に根付きます。 -連携医療にこだわる理由は何ですか。 松本 オールオン4のよさを、理屈で理解できるのが歯科医師など医療専門家です。わたしたちは、地域の方を対象に市民公開講座を開いたり、新聞で情報発信して、インプラントやオールオン4の啓発活動を行っていますが、その一方で地域の歯科医師と一緒になって、オールオン4を盛り上げたいと考えています。大学歯学部を持たない本県は、歯科医師の数では他県に遅れがちですが、「連携医療によるオールオン4」を推進することで、地域歯科医療技術の向上に寄与できればと願っています。 最近わたしが調査したところ、大分県には総入れ歯の患者さんが数万人レベルであることを示唆する結果が出ました。調査からは潜在患者の多さと、連携医療を活用してオールオン4を啓発・促進することがどれほど重要なことかが分かります。今後は医師会会報などを通じて、医師に対してもオールオン4のよさを紹介させていただこうと計画しています。 -オールオン4の診療は、どのように行うのですか。 平野 患者さんの多くは歯周病や虫歯で歯を失っていますので、術前に徹底した歯周治療と口腔清掃指導を行います。オールオン4は、手術の技術ばかりが注目されますが、実は術前の検査や歯周治療、インプラントと上部構造体の徹底したチェックと調整、術後のケアに治療の成否のポイントがあります。 松本 オールオン4を適応する条件を満たしていれば、まずインプラントの上部構造を製作します。次に64列MDCT検査を実施し、そのデータをもとに最新の手術支援ソフトによる分析を行います。手術用ガイドを使ってオールオン4の埋め込み術を行い、その日のうちに人工歯まで入れますが、検査から手術まで一連の作業(MDCT検査、院内ラボによる人工歯製作、手術時の麻酔など)が当院のように、院内ですべて完結できる医療現場はそう多くありません。 -マキシロのオールオン4にどういう展望を描いていますか。 松本 オールオン4の臨床研究会を今月(4月)から立ち上げる予定です。最初は連携している歯科医師を対象に、診断と手術の技術力が身につく実践的な研究会にしたいですね。またマキシロは、日本口腔外科学会指定の専門医研修機関ですので、条件が整えば厚生労働省の臨床研修施設の認定を取得して、若手歯科医師の育成にも協力したいと考えています。 平野 オールオン4治療の成否のポイントは、「時間をかけて患者さんの予後をしっかり診る」ことだと思います。大学医局時代、予後を含めた治療の一部始終をしっかり診る中に解決のヒントがありました。その工夫の蓄積が今日につながっています。マキシロ全員の夢は、オールオン4を大分県の地域歯科医療の中核として確立させ、地域にしっかり根付かせることです。